スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ニノミヤくん

ニノミヤくんは本を読むのが好きだ。歩いているときでさえ本を読んでいる。食事のときも、人と話してるときも、授業中も、寝ているときでさえ夢の中で本を読んでいる。それほどまでに本を読むのが好きなのだ。

そんなニノミヤくんはいろいろたいへんなことがある。台風の日に外を歩くときでさえ本を読むので本がびしゃびしゃに濡れてしまったり、本を読みながらパスタを食しているときフォークを口に運ぶところをあごに刺してしまったり、階段を下りるときに足を踏み外してしまったり、テスト中に本を読んでるとカンニングと思われて怒られたり、毎日がトラブルなのだ。

そしてニノミヤくんは人生最大のトラブルにあってしまった。いつものように本を読みながら学校に向かう途中、道路を渡ろうとしたところ救急車にひかれてしまった。救急車の運転手がすぐに119番に通報し、駆けつけた救急隊員が懸命に処置をしたにもかかわらず、ニノミヤくんは死んでしまった。その手には最後まで本が握られていた。

本が大好きだったニノミヤくんは悲しみに暮れることになった。あの世には本がなかったのだ。人間は死んでしまうが本は死なないためあの世には本がないのだ。ニノミヤくんが目覚めたとき、握っていたはずの本は見当たらなかった。

しかし彼はあきらめなかった。あの世には死んでしまった文豪がいるはずだ。あの世で書かれた本があるに違いない。ニノミヤくんは文豪を探し回った。
そしてみつけた芥川氏。芥川は言った。本を書くことはできないのだよ。本と同様に、筆も紙も死ぬことはないからあの世には筆も紙もないのだ。だから本を書くことはできないのだよ。
ニノミヤくんはがっくりとした。もう本を読むことができないなんて!それなら死んだほうがましだ!いや、もう死んでいるんだ!ああ!!
 
がっくりとしたニノミヤをみつめながら芥川は続けた。本を書くことはできないが、私の頭の中にはストーリーがある。それを話して聞かせることならできる。死んでしまってからというもの、特にすることがないから、食事も睡眠もなにもすることがないのだよ、小説を考えてばかりいたから頭の中にはたくさんのストーリーが溜まっているんだ。どうだい聞くかね?
芥川が聞くとニノミヤが答えた。僕は本を読むことが好きなのです。話して聞かされるなんてとんでもない。ボーリングが好きな人が自分が球になって投げられたいとは思わないのと同じです。ああ本がないなんてもうおしまいだ。あああああああああ!!!
 
ニノミヤの魂は叫び続けた。途切れることなく叫び続けた。あの世では息継ぎをする必要がないから。
ニノミヤの魂は叫び続けることで悲しみを吐き出した。同時に記憶までもが吐き出されていった。自分がなぜ叫んでいるのかもわからなくなり、自分が誰なのかもわからなくなり、本を読むことが好きだったことさえも忘れてしまった。
それでもニノミヤの叫びはとどまることなく続いた。まるでそれが使命であるかのように。
 
ニノミヤの魂はもはや叫びであった。「叫び」そのものであった。生きながらにしてあの世へと迷い込んでしまったある画家が偶然それに出会い、作品に残した。
作品のタイトルは「叫び」であった。。
スポンサーサイト

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント

FC2カウンター

プロフィール

54notall

Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
メインブログ54のパラレルワールド

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。