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睡眠は未来への

授業中にうとうとしちゃって、いつの間にか眠っちゃって、目が覚めたらちょうど授業が終わるところ。ほんの少し目を閉じただけなのになあ。そんなことってよくある。
これは一種のタイムスリップなのではないか。目を閉じた瞬間に時間軸を滑っていって少し先の未来に飛んだ。うとうとしているとき、現実から切り離されたような、あいまいな感覚がある。これは不安定な時間軸にいるために感じることなのではないか。

シンジはそんなことを考えていた。
睡眠は未来へのタイムスリップなんだ。

シンジは現在の世の中にうんざりしていた。
テロとの戦いだかなんだか知らないが、戦争したくてたまらない国があって、他国に落ち度はないか、攻撃する理由がないか、と探り合っている世の中にはうんざりだ。
それでも、侵略のための戦争はなくなったのだから、人類は進歩してきたといえる。もっと先の未来になったらどんな理由の戦争もなくなるだろう。
早く平和な世の中にならないかなあ。

そんなことを考えていたシンジは未来に行きたかった。平和になった未来に行きたかった。
睡眠は未来へのタイムスリップなんだ。


最後の日、シンジは学校を休んで一日中遊びまくった。
次に目が覚めるのは数百年後だ。数百年分遊んでおくぞ。
現在はうんざりする世の中だが、楽しい面もたくさんあった。現在の楽しい部分をたっぷり味わっておきたかった。
過去には二度と戻れないんだ。

最後の晩餐にはでっかいステーキを食べた。デザートには大好物のマスクメロン。
食べ過ぎてお腹がぱんぱんで少し苦しかった。
我ながら要領が悪いな、でも最後くらいハメはずさせろよ。

シンジは布団に横になった。
よ~し、数百年眠るぞ。起きたら平和な未来だ。楽しみだなあ。
そして目を閉じた。一日中遊びまくった身体は一瞬にして深い眠りについた。

シンジは永い眠りについた。人間が一生のうちに眠る総時間よりも永い眠り。
「永遠の眠り」と形容してもいいくらいに深く眠っていた。


長い長いトンネルにいるようだった。青や白や黒に色が変わるトンネルを猛スピードで飛んでいく、、

永い眠りの末にシンジは目を覚ました。
「ここはどこだ?」「あれ、私はだあれ?」
最初はなんだかわけがわからなかった。記憶がなくなった人みたい。
永い眠りの中で記憶のすべてを忘れてしまったかのような。

何かを思い出そうと目を閉じ記憶を探し始めた。
長いトンネル、、青白黒、、、飛んで、、、、
そうしているうちにシンジはまた眠ってしまった。

海の中にいるようだった。海底に何か大事なものがあるような気がして、必死に潜ろうとするのだけど、身体はどんどん浮き上がっていってしまう。大事なものから離れていく、、

シンジは再び目を覚ました。
いかん、二度寝しちゃった。起きなきゃな。
シンジはようやく世界を見た。そこには色とりどりの花が咲き乱れていた。
うわあ、キレイだなあ。まるで夢のよう、、まさかまた夢じゃあるまいな。
シンジは赤い花のにおいを嗅いでみた。
ああ、いいにおいだ。これは夢じゃないぞ。
すると記憶がよみがえってきた。
そういえば、昨日はマスクメロンを食べたんだった。ステーキも。
あれ、昨日じゃないな、、数百年の眠り、平和な未来、睡眠は未来への、、、
あ!

シンジは走り回った。数百年分の運動不足を補うように。
すごいすごい、お花だらけの未来、争いごとなんてどこにもないぞ、平和だ!
さすがに数百年ぶっ通しで走り回ることはできなくて、数分で走るのをやめた。
心臓の鼓動と興奮は激しくて、足は止まっても思考は走り続けた。
これが未来なのか。いや、現在か?未来が現在になって、現在が過去になって?どうでもいいや。花の世界なんてすばらしい。コンクリートで固めた世界なんてうんざりだったから、こんなに自然に溢れた世界なんてすばらしい。色とりどりの世界、生命に満ち溢れている!ああ平和な世界!

心臓の鼓動が落ち着くにつれて、気分も落ち着き始めた。
でも、ここはどこだ?僕の部屋はどこ?布団で眠っていたはずなんだけどなあ、、
取り壊されちゃったのかなあ、でもなんで僕だけ眠ったまま取り残されるなんてことある?

シンジは不安になってきたので、誰かにこの状況を聞きたくなった。
花畑を歩いていくと、おばあさんがいた。
「すいません、ここどこですか?」
「あら、新人さん?たまにいるのよねえ、気づかない人。」
「え?」
「ここは天国ですよ」

さっきまで高まっていた心臓の鼓動と、さっきまで走り回っていた二本の足はどこかへ消えてしまった。


シンジはそれでも満足だった。
争いのない世界、悲しい死のない世界。天国はまさに平和な世界だった。

睡眠は未来へのタイムスリップなんだ。
自分が死んじゃった未来にまで飛んじゃったんだ。
でも数百年分遊びまくって来たんだからよしとしよう。

これからは平和な未来を満喫しよう。。


「天国」はヴァーチャル空間だった。
睡眠が未来へのタイムスリップだと考える人間は少なくなかった。苦しい現在をやり過ごすために、睡眠によって未来へ飛ぼうとした人間はたくさんいた。
シンジと同じように数百年後の未来へ行きたいと思う者もいた。永い眠りにつく者たち。
しかし彼らは目覚める方法を知らなかった。眠ったきり目覚めない者がたくさん出てきたのだ。
永く眠り続けていると、身体から幽体が離脱してくる。朝起きたときに身体に力が入らなくて思うように動けないことがあるが、それは幽体が完全に身体に戻っていないために起こる現象である。
離脱した幽体は現実世界をさまよう。現実世界をさまよう幽体は故意にではなくともさまざまな悪影響をおよぼす。心霊現象は多くの人にとって嫌なものである。
そこで、ある科学者が離脱した幽体を集める装置を作った。それが「天国」である。

「天国」は幽体をただ集めるだけではない。「天国」は幽体が見たい夢を見させる。だから「天国」なのである。幽体にとって天国のような世界があるのだ。
「天国」が作られた理由は、現実をさまよう幽体に天国のような夢を見させたいという願いからだった。
しかし今は違う理由がある。「天国」の映像は衛星テレビで放映されているのだ。
月10万円という高額にもかかわらず、加入者数は全世界で1億人を超えている。他人の夢、天国を見ることができるというのは魅力的なことなのだ。
天国にもいろいろある。ひどくワイセツなものや、暴力的なもの、グロテスクなもの、マニアに受ける天国はたくさんあるのだ。ある人にとっての天国はある人にとっては地獄かもしれない。

「天国」にいる幽体は身体と切り離された存在になっているので、寿命は存在しない。永遠に夢を見続けられるのである。まさに永遠の眠りというわけだ。
他人に見られているとも知らずに天国を楽しむ幽体。大金が生まれているのに一銭ももらえない。無償労働。
しかし、天国を永遠に夢に見ることができるのだからよしとしよう。


シンジは天国の夢を見ながら時間軸を滑り続けるだろう。
睡眠は未来へのタイムスリップなんだ。。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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未来の楽園は天国なんですね。
映画「AI」のように人類が全くいない未来、それこそ楽園だったりして…。

人間がいない世界が楽園だ、なんて想像できる人間という生き物は不思議だ、と思ったり。。

人間がいない世界が楽園だ、なんて想像できる人間という生き物は不思議だ、と思う人間がいるということは、自由だと感じたりして…。

本当にメタが好きなんですね!笑

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Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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