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秘密

僕は俗にいう引きこもりのネットオタク。
外に出ることのできない僕にとって、現実世界とつながるにはネットの世界を経由するしかなかった。
だから僕にとってネットはヴァーチャルではなくリアルだった。

ブログが流行っているというので僕もブログをやることにした。
僕がネットでみつけたおもしろいネタを紹介するブログ。
アクセス数は10もないけど、自分が好きだと思えるものを紹介できるのがうれしかった。

こんな僕のブログにコメントをくれる人が現れた。
「310sing」さん。
なんて読むんですか、と聴くと「singでいいよ」って。読めない。
でもsingさんは毎日コメントをくれるようになった。
singさんは僕にとって最初の友達だった。

コメントとコメント返しで交流しているうちに、僕はsingさんを親友だと思うようになっていった。
僕はsingさんになら秘密を打ち明けてもいいと思った。
その日僕はブログにこう書いた。

///
秘密

僕は今日親愛なるsingさんに秘密を打ち明けようと思う。

僕は小さいとき父に両足をのこぎりで切られた。
それで僕は外に出ることなく引きこもることになったんだ。

変だよね、キモイよね、僕には両足が無いんだ。
歩けないから部屋の中をナメクジみたいに這いずり回って移動しているんだ。

両足を切られてから僕は死んだような生活だった。
誰も信用できなかったし、一人きりの世界に閉じこもった。
そのとき僕は本当に死んでもいいと思った。

そんな僕を心配して母がパソコンを買ってくれた。
まもなく僕はネットの世界に引き込まれていった。
ネットを通じて僕は外の世界に出ることができたから。
ネットのおかげで僕は生きていることを実感できるようになったから。

だから僕はネットの世界はすばらしいと思う。
こんな僕でも世界中に行くことができるのだから。

それに、singさんという最高の友達もできたし。
singさん、僕は君を信頼しているし、最高の友達だと思っています。
これからもよろしくお願いします。
///

だけど、その日singさんからのコメントはなかった。
次の日も、次の日も、、
僕は新しいブログ記事を書けなかった。
singさんはどうしたのだろう。
もしかして、僕が両足無いから気持ち悪いから嫌いになっちゃったのかな。

僕は唯一の友達を失った。
singさんはコメントにリンクを貼っていないので、singさんがどこにいるのかわからなかった。
僕はこのブログのコメントを通してでしかsingさんとつながっていなかったんだ。
singさんが切ろうと思えば切れる、そんな関係だったんだ。

それでも僕はsingさんを探そうと思った。
この広いネット世界の中でsingさんただひとりをみつけることなんてできるだろうか。
だけど、singさんは簡単にみつかった。
「310sing」でgoogle検索したらすぐにみつかった。
singさんもブログをやっていたんだ。

僕は最愛の友と再会できてうれしかった。
だけど、歓喜はすぐに悲愴に変わった。

singさんのブログにはこんな記事が書いてあった。

///
ナメクジ人間

俺がちょくちょく見てるブログで、気持ち悪いことが書いてあった。
そいつは親父に両足切られて、部屋ん中でナメクジみたいに生活してるんだって。
ズズ、、ズズズ、、って妖怪だよな!
それで、引きこもりでネットばっかやってるんだぜ。
ナメクジが暗がりでネットって、気持ち悪すぎ!
そんでもって、「僕はネットの世界で生きていることを実感している」んだって、
お前、もう死んでるよ!妖怪だよ!
みんなもなんとか言ってやってください。
///

信じられなかった。singさんがこんなことを書くなんて。
妖怪だなんて、、、死んでるなんて、、、

僕は再び一人きりの世界に閉じこもった。
もう誰も信じられなかった。唯一の居場所だったネットの世界さえも。
今度こそ本当に死んでもいいと思った。

13日後、僕は決心した。
その前に、ブログに遺書を書こうと思った。
久しぶりにパソコンの電源を入れた。

僕のブログのトップページはあの「秘密」のままだった。
singさんとより親密になりたくて、逆に離れてしまった、あの「秘密」。

ふと、「秘密」にコメントが来ているのに気づいた。
しかも20個も。
singさんからだった。20個すべて。

///
両足が無くたって、変じゃないしキモくもない。
お前はお前だろ。俺はお前好きだぜ。
友達だなんて言ってもらえて本当にうれしいよ。

でさ、俺の友達にお前のこと話したらさ、みんな励ましの言葉をくれたぜ。
これから紹介するから↓
///

その後はずらっと励ましの言葉が続いていた。「ぜんぜんキモくなんかないよ。キモイと思う人の方が信じられない。胸張って生きてください」「僕もネットの世界に救われたことがあります。お互いがんばろう」「両足が無くたって生きているんだ。それはすばらしいことなんだ」、、、

そして最後のコメントはこうだった。

///
お前のことを受け入れてくれるやつは現実の世界にもたくさんいるんだぜ。
たしかにネットの世界で生きるのもいいけど、引きこもってばかりいるなよ。
外の世界もいいもんだぜ。怖い世界なんかじゃない。
車椅子でも義足でもなんでもあるんだ。
だからさ、俺ばっかりを最高の友達って言うんじゃなくてさ、
もっと広い世界でたくさんの友達を作ったらいいんじゃないか、
ってそう思うぜ。
///

僕は何がなんだかわからなかった。
ブログではあんなにひどいことを書いておきながら、励ましの言葉って。
しかも友達からの励ましの言葉をこんなにたくさんも。

僕は前に見つけたsingさんのブログに行ってみた。
「ナメクジ人間」の記事、そのコメントは50もあった。
singさんに対する罵倒がたくさんあった。「sing最低」「singひどすぎ!」「お前こそ死ね!」。
その中には、僕のブログのコメントにあった励ましの言葉が混じっていた。

そこで僕は気づいた。
singさんは僕に対する励ましの言葉を集めるために、こんなひどい記事を書いたんだ。
そのせいで自分が悪く言われようとも、僕を励ますために。
そんなことも知らずに僕は、singさんがひどいやつだと思い込んで、、

その日僕は一晩中泣いた。

僕はsingさんに秘密をひとつ打ち明けた代わりに、またひとつの秘密を作ってしまった。
僕がsingさんのブログを読んでいるという、秘密。
この秘密だけは絶対に打ち明けてはいけないと思っている。。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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途中ちょっとイヤな感じでしたが、ラストへの持っていき方が良かったです。
でも「僕を励ますために」と僕は本気で思っているのか、またそれが秘密なんでしょうか。

つまり僕の表現力が未熟なんです。。

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プロフィール

54notall

Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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