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「レジェンド・オブ・ソウルズ」

キリトは目を覚ました。
夢を見ていた。なんだか強烈な夢。だけど夢の断片は急速に崩れていって、どんな夢だったかほとんど覚えていない。ふと気付いて時計を見た。もうこんな時間か。仕事に行く準備をしないと。もう少し早く起きたほうがいい、そう思っているのだが、夢を見ていると、夢が目覚めを引き止める。強烈なイメージが自分を捕える。だけどそのイメージは思い出されない。どんな夢だったか。声、、声が聞こえた気がする。声のする方へ走っていくような。男の声ではない。女の声だ。そんな気がする。この場合、女の声の方がふさわしい。男の声に誘われて走っていくなんて、気持ち悪いじゃない。いや、ただのラディカルなイメージにすぎないのか。そもそも声が本当にしたのかさえ、、、もうこんな時間だ、急がないと。
夢のイメージは、その断片が失われたにもかかわらず、キリトの心を捕えていた。

会社にて。
「よう、キリト、元気か?」
声をかけたのは同僚のハーディ。いつもおきまりのあいさつにキリトはいつもこう返す。
「普通だよ」
「そうか、それはよかった。でも最近調子よくない顔してるぞ。なにかあったのか?」
「まあね。つきあってた彼女に逃げられたんだ」
「お前に彼女なんていたのか!?嘘だろ?」
「もちろん、嘘だよ」
キリトは生まれてこのかた彼女がいたためしがなかった。女と接するのが苦手なのだ。いや、そもそも人と接するのが苦手なのだが、女は特に。
「キリトくん、今夜空いてるかしら?」
上司のカツラギさん。キリトに興味があるのかないのか、最近よく誘ってくる。
「いいえ、今夜は空いてません」
キリトに空いてる夜はなかった。夜の時間は誰にも開放されない、一人きりの時間だった。
「そう、じゃあまた今度ね」
声、、、いや、カツラギさんの声ではない。夢の中の声はもっと、独特の響きがあったような、、気がする、わからないけど。
「あ、そうだ。キリトくん、今日の昼、取引先から営業の人が来てあなたに話があるそうよ」
「そうですか」
「そうそう、きれいな女性の方らしいわ。」
女、、、。

昼、その“営業の人”がきた。
「あなたがキリトさんね。はじめまして、月守です。」
この声、、この独特の声、、夢の中で聞こえた声。この人、、。でもあまりいい気持ちがしなかった。むしろ嫌な感じ、というか、胸の真ん中辺りがもやもやとするような。もしかすると、声のする方へ走っていたのではなく、声から逃げていたのではないか。そういえば、夢から覚めたときいつも、嫌な感じがしていたような気がする。
「キリトさん、、、」
「え?」
また夢のイメージか、、。
「もしかして、声、ですか?」
「―――――。」
「なんか、最近よく言われるんですよ。以前会ったことありませんか?というか、その声聞いたことあるんですけど?って。はじめて会った人なのに。私の声って独特だからあまり似た声の人っていないと思うんですけど、不思議ですよね?もしかしてキリトさんも?」
「え、ええ。なんか、夢の中であなたの声が聞こえたような、、気がしただけです。なんでもありません。では早速お話の方を伺いましょう」
最近よく言われる?他の誰かも同じような夢を見ているということか?一体なぜ?いや、そんなことあるわけない。なんなんだ?よくわからないな。

商談は終わった。ある商品の共同開発とかなんとかという話だった。いつものように、話をなんとなく聞いて、判子を押しておいた。それだけでよかった。来る仕事を二つ返事で引き受ける。それだけで給料をもらえた。キリトにとって仕事は簡単だった。それよりも、あの声。月守、、、。

車の中、月守とその付き人。
「間違いないわ、夢の中で私の声を聞いていた、あのキリトが“レジェンド・オブ・ソウルズ”よ。」
「では捕えた方がよかったのでは?」
「だめよ。会社の人たちに気付かれるわ。捕獲計画は秘密裏に行わないと、、」
車はハイウェイを疾走していった。。
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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