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タイラント2

ジルはふとんの中でうずくまっていた。
何もかもが恐ろしかった。

ドアが開く音。

「お兄ちゃん?」

兄ではなかった。
姿かたちは兄だったが、その眼は人間のものではなかった。
荒い息づかいとともにゆっくりと近づいてくる。
よだれが床に落ちる。

ジルは銃を兄に向けた。
いや、兄タイラントに。

銃は本当は自分を撃つために所持していた。
度々その銃口をこめかみに当てていた。
何もかもが恐ろしかった。
遺書はずっと机の一番上の引き出しに鍵をかけてしまってあった。

銃声。

その銃弾は自分ではなく、兄を撃ち抜いた。
心臓を貫いた。
兄タイラントは倒れ、床に暗紅の血が広がった。

一発の銃弾は、兄だけでなく、同時にジルをも殺した。
一発の銃弾は、すべてを変えた。
生を死に、死を生に。

人間は死を意識したときに生を実感する。
だからこそ度々銃口をこめかみに向けたのかもしれない。
ジルは生に目覚めた。
兄を殺した罪を背負った以上、私は死ねない。

まだ終わりではない。

先ほどの階下での兄の叫び。
「母さん!父さん、なにやってるんだ!」

そして外での車の衝突、バイク事故。
人間を喰らう人間。

おぞましかった。
何もかもが恐ろしかった。
しかし、終わらせなければ。

ジルは銃を握り締め、階下の寝室へと歩き出した。
やらなければ、やられる。

部屋を出ようとしたそのとき、ジルは空腹を感じた。
突然の飢餓感。
ここしばらく何も口にしていないのだった。
食物はないのだ。

部屋でずっとうずくまっていたジルは、他の者よりは空腹感を感じていなかった。
しかしただいまの戦闘によって、急激に胃は目覚めたのだった。
飢餓感。
目の前には肉塊が転がっていた。
先ほどまでは生きていた肉が。

ジルは喰らった。
兄を。
人の肉を喰らうなんて嫌だ。
そんなことをするくらいなら死んだ方がましだ。
一瞬前まではそう思っていた。
一瞬後、一発の銃弾はすべてを変えていた。
どんなことをしてでも生きなければ。

骨だけを残し、あとはすべてきれいに平らげた。
床に広がった血も飲み干した。
これで私は兄とひとつになった。
罪を背負ったのだ。
罪を背負った人間は、その罪を償うために生きなければならない。
そう思っていた。

ジルは身体から溢れ出す生命力を感じていた。
私には兄がついている。
そしてこの、運命を変える銃が。

ジルは再び歩き出す。
運命を変えるために。。
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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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