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タイラント3

ドアを叩く音。ドンドン。
その音は次第に速く強くなっていく。ドンドンドンドンドン。
音が止まる。そして、強烈なドーン。ドアがきしむ。いや、家全体が大きく揺らいだ。
間をおいて、またしても強烈なドーン。ドアにカギはかかっていない。
三回目の強烈なドーンでドアはぶち破られた。父タイラントだ。

ジルはその姿を見て思った。これは人間ではない。この部屋のドアは外からは引いて開くのだ。それをこのタイラントは押し破ったのだ。
タイラントと化した父の体はひとまわり大きくなっていた。
それは母を喰らったためなのか、それとも恐怖心からそう見えているだけなのか、ジルにはわからなかった。

ジルは迷わず父タイラントを撃った。
銃弾は父タイラントの胸に当たった。心臓に当たった。
タイラントは自分の胸を見た。しかし何事もなかったかのように再びジルにむかってきた。
そんなバカな。
ジルはもう三発タイラントの心臓に銃弾をぶち込んだ。
タイラントは止まらない。胸の辺りから血が滴り落ちているのに。
タイラントは右腕を振り上げた。
ジルは直感した。死ぬと。
振り下ろされる右腕を見て思った。兄さん、ごめん。いや、右腕など見えていなかった。次々とあらわれるフラッシュバックを見ていた。

強烈な銃声。

ジルは我に返った。フラッシュバックから戻ってきた。
目の前には巨大なタイラントがいた。
その顔は、、その頭は吹き飛んでいた。
首から大量の血が吹き出しており、その血はジルにも降りかかった。
タイラントの身体が前のめりに倒れてきたので、ジルは横に飛びのいた。

「大丈夫かい?」
ドアの方を見ると、警官の制服を着た青年が立っていた。その手にはショットガンが握られていた。
「あなたは誰?」
「僕はクリス。銃声が聞こえたんで急いでこの部屋に駆けつけたんだ。」
「助けてくれてありがとう、、」

クリスは父タイラントのもとへしゃがみこんだ。
「なにするの?」
「食べるのさ。もったいないだろう?この世界にはもう食べ物がないんだから。」
「でも、、待って!、、それは私の父なの。母も含まれるわ。だから、、」
「そういうことか、、わかったよ。君に任せる。僕はここに来る途中で何体か食べてきてるから。食べ終わったら下に下りてきてくれ。待ってるから。」
そう言ってクリスは階下へ降りていった。

兄以外でこんな風に男の人と話すなんて初めて。ジルはそう思う間もなく父タイラントにかぶりついた。
父を喰らうのは兄を喰らう以上に罪悪感を感じた。しかし他人に喰われるのはまっぴらだった。それに、胃は求めていた。
ジルはタイラントの吹き飛んだ頭の肉片も含めてきれいに平らげた。

今、ジルは家族全員の命を背負ったのだった。
兄、父、母、みんなの血肉が体内に宿っている。
生命力が溢れてくる。みんなの分まで生きなければ。絶対に死ねない。

ふと思い出して机の一番上の引き出しを開けた。
カギの場所を忘れてしまったので強引に引き破った。
そして遺書をばらばらに引き裂いた。もうこんなものは必要ない。
舞い落ちる白い紙片は、この狭い部屋を出て行くジルの背中を祝福しているようだった。
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テーマ : 自作連載小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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