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タイラント5

インドのとある山奥、古い寺院で一人の高僧が経を唱えている。
黄金の巨大な菩薩像を前に、そして十二の死体を背に。

敬虔なる仏教徒であった僧たちは人肉を喰わなかった。理性を失い殺し合うなんてことはしなかった。そして、飢えて死んだ。

若い十二人の弟子たちはみな死に、年老いた高僧だけが生き残った。
なぜ老いぼれのわしだけが、、と高僧は思った。それはただ単に新陳代謝の違いだったが、つまり若者はより多くの肉を必要としていたのだが、それだけでは割り切れないものがあった。順番が違うだろう、と。

高僧は弟子たちの遺体を埋めてやろうと思ったが、死んだ土は硬く、掘ることができなかった。死んだ世界では死者を弔ってやることもできないのか、、高僧はそれでも、死者を無事に黄泉へと送り届けるために、せめて菩薩の見守る前で、経を聞かせてやろうとしたのだ。

その高僧の飢餓感も限界だった。経を詠む高僧の身体は痩せ細っていた。肋骨からあばらにかけて肉が、いや皮が張りついていた。腹と背が文字通りくっついていた。縮小した胃がその間に挟まっているけれども。
強烈な飢餓感の中で、高僧はなかば狂ったように経を唱えていた。それは死んだ弟子たちを送るというよりもむしろ、自分自身を黄泉へと送り届けるための呪文のようでもあった。

高僧は戦っていたのだ。強烈な飢餓感の中で。後ろには肉がたんまりとあるのだ。この飢餓感を帳消しにして余りあるほどに。空っぽになった腹を満たして溢れるほどに。しかしそんなことは決してしてはならない。神聖なる菩薩様の前で、苦楽を共にしてきた弟子たちを喰らうなど、してはならないのだ!
おかしくなりそうな頭を必死に抑えて、いや、すでにおかしくなっているのだが、高僧は経を詠むことによって気を紛らわせようとしていた。湧き上がる食欲に身体が震えだす。それを抑えるように経を詠む声は大きくなる。
「南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏ぅ!!!」

菩薩像の前で、一人の高僧が、強烈な飢餓感の中で、腹を満たせるほどの肉を背に、暴走しそうな食欲を必死で禁じながら、経を唱えている。これぞ宗教のあるべき姿!
「南無阿弥陀仏っ!!南無阿弥陀仏ーーーぅぅぁ!!!!」

一人の山賊が山の中をさまよっていた。強烈な飢餓感の中で。肉はないか、肉はないか、と。そして、とある寺院をみつけた。

寺院は静かだった。物音ひとつしなかった。山賊の足音だけが聞こえた。
何もないのだろうか、そう思いつつ山賊は御堂に足を踏み入れた。
そこには十三体の肉があった。実際、山賊にとっては数などどうでもよかった。たんまりの肉。貪りついた。

ものの数分で三体の肉を喰らい尽くした。山賊の腹は満たされ、ここでやっと一息入れた。実際、息をするのも忘れてひたすら喰っていたのだった。ここで初めて山賊は御堂を見渡した。そして、そこには黄金の巨大な菩薩像があった。光り輝く眼差しで山賊を見下ろしていた。山賊は、涙を流した。

「おれぁ、仏教なんてこれまでちっとも信じてこなかったけんども、菩薩様ぁ、おれぁ、たった今からあんた様を心から信じますだぁ。」

そう言って山賊は目の前にあった高僧の肉を喰らいはじめた。。
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横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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