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タイラント

誰もが死んだ。

動植物が死に絶え、、、

人間だけが残った。

食物がなかった。

人間は殺し合い、、

喰らい合った。

まさに――――

弱肉強食――――。


「父さん、なにやってるの?」

暗い部屋の中で父がなにかを貪り喰っていた。
父の背中越しに見えたのは、顔の半分が喰い散らかされた人間。
しかしそれは顔の残りの半分で母だとわかった。

「母さん!父さん、なにやってるんだ!」

父が振り返った。
その眼はもはや人間のものではなかった。
とてつもない恐怖を感じた。
そして、逃げ出した。

部屋を飛び出した。壁に激突した。痛がる間もなく廊下を走り出した。破裂しそうな心臓の激動が身体のバランスを狂わせているみたいに、身体はもつれ何度も転んだ。廊下がいつもよりもはるかに長く感じられた。ベルトコンベアの上を走ってるみたいに、走っても走っても進んでいないように感じた。

気づいたら家の外に出ていた。家を振り返った。そして気づいた。
家の中には妹がいる!
しかし中には獰猛なタイラントがいるのだ。
助けに行かなければ、、でも、、
正義感と恐怖感のせめぎ合い、、
心はそんなに強くはない。

甲高いブレーキ音、そして激突音。
左を向いた。隣の家の塀に車が激突していた。運転席のドアが開いた。
助手席に乗っている女が運転席の男の首筋に噛み付いていた。
男は女の頭を引き剥がそうとしていたが、その腕はすぐにだらりと垂れ下がった。

背後で女性の悲鳴が聞こえた。
振り返るとヤンキー風な女が逃げていた。
その後ろから走ってきた派手なバイクが女を派手に轢いた。
女の身体はまるで人形のように折れ曲がり、吹っ飛んだ。
バイクから降りてきた男は倒れた女に走りより、その胸に貪りついた。
男はおっぱいではなく、心臓を喰らおうとしていた。

みんな獰猛なタイラントだ。
恐怖が全身を支配する。
こうなったら、、

獰猛な父タイラントがいる家へ引き返した。
しかし、妹を助けるためではない。
喰らうためである。

正義感と恐怖感のせめぎ合い、、
心はそんなに強くはない。
みんな獰猛なタイラントだ。。

テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

ニヤリ

ニヤリはネコ科の哺乳類。
足裏には肉球が発達し、音をたてずに歩く。夜行性で、瞳孔は円形から針状まで大きく変化する。長いひげは感覚器官の一つ。
古代エジプト以来神聖な動物とされる一方、魔性のものともされる。

笑いとは、楽しかったり、嬉しかったりなどを表現する人間特有の行動の一つ。

だから彼女のニヤリとした表情は、人間が使う意味での「ニヤリ」ではない。
しかし私は敬意を込めて、彼女を「ニヤリ」と呼んだ。

私は彼女の、顔の筋肉が弛緩し和やかな表情になる「ニヤリ」が大好きだった。
初めて道端でニヤリと出会ったとき以来、私はいつもニヤリと一緒にいる。
どこにいくときもニヤリと一緒。なにをするときでもニヤリと一緒。
ニヤリだけが私に微笑みかけてくれた。


ある日の散歩道、私は横断歩道の向こう側にいる一人の女の子に目がいった。
女の子は私に微笑みかけた。
誘われるように、私は横断歩道を渡った。
ニヤリもあとからついてきた。
私が横断歩道を渡りきったとき、背後でクラクションが鳴った。
振り向くと、大型トラックが走ってきていた。
あわててニヤリの方を向いた。
ニヤリはトラックの方を向いて固まっていた。
そして、私の方を向いてニヤリと笑った。
その刹那、トラックがニヤリをはねた。

トラックは走り去った。私はニヤリに駆け寄った。
ニヤリは死んでいた。もう表情はなくなっていた。沈黙。
もう二度とニヤリを見ることはできなかった。私はうなだれた。
そんな私を、女の子はそっと支えてくれた。

その女の子が、現在の私の妻だ。
彼女はいつも私にニヤリと微笑みかけてくれる。

もしかすると、ニヤリは私たちを結び付けてくれた、天使だったのかもしれない。。


笑み、、、顔の筋肉が弛緩し、リラックスした和やかな表情。
人間だけでなく、一部の動物も、極度に緊張した顔の筋肉をほぐすためにこのような表情になる。。

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

上と下


人間は二本足で立つようになった。
そして、上と下の概念が生まれた。


動物は四本足で這いつくばっているから、
上も下もない、みな平等だ。

しかし、人間は二本足で立つから、
上と下がある。

上にいる者、下にいる者。
上流社会と下流社会。


上と下、それは天国と地獄。
上下の概念は、幸と不幸を生み出した。

四本足で這いつくばっている動物たちは、
幸も不幸もなく、ただただ平和に生きている。

しかし、人間には上下があるから、幸と不幸があるから、
苦しい。


若者は、力に溢れた若者は、幸せを求めて立ち上がる。
少しでも上に、幸せになりたいと欲望する。

しかし、力のない者、老いぼれた者や希望を失った者は、
立つ気力を失い、這いつくばる、横たわる。

競争に疲れた身体は、平等を求めて、平穏を求めて、這いつくばる。
しかし、二本足で立つ者、上にいる者が容赦なく、踏みつける。

安息の地は、ない。




ベッドの上ではみな平等よ。

金持ちも、貧しい者も、
ベッドの上では誰もがただの動物。

誰もが気持ちよくなる権利をもってる。


そう言って女は男に甘く口づけた。
大人のキス。


だから、人間はセックスするのか。

安息を求めて。


男と女はベッドに倒れこんだ。

安息の地へ。。

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

「神ノート」第一話

「あなたが、神様ですね。」
青年が語りかけた先には、一人の老人が背を向けて座っていた。
「あなたが貿易センタービルに飛行機を衝突させ、アメリカにアフガンやイラクを攻撃させ、大型台風カトリーナを引き起こし、
そして僕の母を殺した!」
老人は青年の声などまるで聞こえていないかのように黙々とノートに筆を走らせている。
「僕は最後の一つの罪をもってあなたを裁く。神が犯した罪は人間が裁かなければならない。
これは、天誅ではなく人誅である!」
青年は腰に帯びていた刀を抜き、老人の背中に斬りかかった。老人の背中は右肩から左脇腹にかけてパックリと割れ、真っ赤な血が勢いよく吹き出した。刀身は骨までも貫いており、老人の左上上半身はまるで裂けたチーズのようにだらりと垂れ下がった。

青年は外へ出た。手が震えていた。神を殺してしまった。まだ高校生の僕が。しかし罪の意識ではない。裁きは正当だった。神を殺したのは正しかった。青年の震えは、歓喜と恐怖の入り混じったものだった。
青年はふと足を止めた。何かがおかしかった。いやに静かだ。まったくの無音。さっきまでは考え事をしていたからだと思っていたが、今こうして耳を澄ましてみても、物音ひとつしない。空気の動きさえ感じられない。
まるで時間が、、、
青年は振り返り、走り出した。もと来た道を急いで引き返した。
まさか、、、まさか、、、

青年は神の部屋のドアを勢いよく開けた。無数の本棚と無限数の本に囲まれた部屋。天井も壁も見えないくらいはてしなく、本棚は続いている。その部屋の真ん中に、机と椅子がぽつんとある。そこに神は座っている。座っていた。
神の姿は、亡骸は消えていた。飛び散った血液の痕さえも残っていなかった。あるのは、机の上のノートとペンだけ。
神は黙々とノートを書いていた、、、
青年は机に駆け寄り、ノートに目を走らせた。そこには、青年が神を殺す様子が事細かに書かれていた。神が死んだところで、記述は終わっていた。

―――世界は演じている、神が書いたシナリオを。―――

青年は脱力し、ひざをついた。手が、震えていた。
「僕は、、、神になってしまった。。」

テーマ : 自作小説(ファンタジー)
ジャンル : 小説・文学

「レジェンド・オブ・ソウルズ」

キリトは目を覚ました。
夢を見ていた。なんだか強烈な夢。だけど夢の断片は急速に崩れていって、どんな夢だったかほとんど覚えていない。ふと気付いて時計を見た。もうこんな時間か。仕事に行く準備をしないと。もう少し早く起きたほうがいい、そう思っているのだが、夢を見ていると、夢が目覚めを引き止める。強烈なイメージが自分を捕える。だけどそのイメージは思い出されない。どんな夢だったか。声、、声が聞こえた気がする。声のする方へ走っていくような。男の声ではない。女の声だ。そんな気がする。この場合、女の声の方がふさわしい。男の声に誘われて走っていくなんて、気持ち悪いじゃない。いや、ただのラディカルなイメージにすぎないのか。そもそも声が本当にしたのかさえ、、、もうこんな時間だ、急がないと。
夢のイメージは、その断片が失われたにもかかわらず、キリトの心を捕えていた。

会社にて。
「よう、キリト、元気か?」
声をかけたのは同僚のハーディ。いつもおきまりのあいさつにキリトはいつもこう返す。
「普通だよ」
「そうか、それはよかった。でも最近調子よくない顔してるぞ。なにかあったのか?」
「まあね。つきあってた彼女に逃げられたんだ」
「お前に彼女なんていたのか!?嘘だろ?」
「もちろん、嘘だよ」
キリトは生まれてこのかた彼女がいたためしがなかった。女と接するのが苦手なのだ。いや、そもそも人と接するのが苦手なのだが、女は特に。
「キリトくん、今夜空いてるかしら?」
上司のカツラギさん。キリトに興味があるのかないのか、最近よく誘ってくる。
「いいえ、今夜は空いてません」
キリトに空いてる夜はなかった。夜の時間は誰にも開放されない、一人きりの時間だった。
「そう、じゃあまた今度ね」
声、、、いや、カツラギさんの声ではない。夢の中の声はもっと、独特の響きがあったような、、気がする、わからないけど。
「あ、そうだ。キリトくん、今日の昼、取引先から営業の人が来てあなたに話があるそうよ」
「そうですか」
「そうそう、きれいな女性の方らしいわ。」
女、、、。

昼、その“営業の人”がきた。
「あなたがキリトさんね。はじめまして、月守です。」
この声、、この独特の声、、夢の中で聞こえた声。この人、、。でもあまりいい気持ちがしなかった。むしろ嫌な感じ、というか、胸の真ん中辺りがもやもやとするような。もしかすると、声のする方へ走っていたのではなく、声から逃げていたのではないか。そういえば、夢から覚めたときいつも、嫌な感じがしていたような気がする。
「キリトさん、、、」
「え?」
また夢のイメージか、、。
「もしかして、声、ですか?」
「―――――。」
「なんか、最近よく言われるんですよ。以前会ったことありませんか?というか、その声聞いたことあるんですけど?って。はじめて会った人なのに。私の声って独特だからあまり似た声の人っていないと思うんですけど、不思議ですよね?もしかしてキリトさんも?」
「え、ええ。なんか、夢の中であなたの声が聞こえたような、、気がしただけです。なんでもありません。では早速お話の方を伺いましょう」
最近よく言われる?他の誰かも同じような夢を見ているということか?一体なぜ?いや、そんなことあるわけない。なんなんだ?よくわからないな。

商談は終わった。ある商品の共同開発とかなんとかという話だった。いつものように、話をなんとなく聞いて、判子を押しておいた。それだけでよかった。来る仕事を二つ返事で引き受ける。それだけで給料をもらえた。キリトにとって仕事は簡単だった。それよりも、あの声。月守、、、。

車の中、月守とその付き人。
「間違いないわ、夢の中で私の声を聞いていた、あのキリトが“レジェンド・オブ・ソウルズ”よ。」
「では捕えた方がよかったのでは?」
「だめよ。会社の人たちに気付かれるわ。捕獲計画は秘密裏に行わないと、、」
車はハイウェイを疾走していった。。

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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54notall

Author:54notall
横浜国立大学マルチメディア文化課程。
爆笑問題太田さん、ダウンタウン松本さん、B'z稲葉さん、ラルクHYDEさん、椎名林檎さん、マイクル・クライトン、、に強く影響を受けています。
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